2026.06.25

アニメ翻訳の言葉遣いの難しさ

アニメ作品は、日本語だけではなく、いまや世界のさまざまな言語で楽しまれています。しかし、アニメの特徴でもある独自の表現や男女の言葉遣いの違いなどがあることに加え、日本語は主語を省略しやすく、文脈依存性が高いという特徴があるため、翻訳は簡単ではありません。また、自然に楽しめる翻訳であることも、エンタメであるアニメ翻訳では求められます。

本稿は、アニメ翻訳ではどのように言葉遣いをキャラクターに合わせ、アニメの世界観とマッチさせているかをご紹介します。

アニメ翻訳の特徴は?字幕と吹き替え

アニメ翻訳には字幕翻訳と吹き替え翻訳の二つの形式があります。字幕や吹き替えで別の言語になったアニメ作品は、キャラクターの雰囲気や作品の世界観を反映させた言葉遣いが必要です。しかし、言語によってはなかなか当てはまる表現がなかったり、字数の制限があったりと、しっくりくる表現を別の言語に置き換えるのは容易ではありません。

字幕では字数の制限があり、吹き替えでは口の動きに合わせたリップシンクが必要です。言語が違うため全く同じにはできませんが、発声の長さや口の動きに合わせて、音節数やイントネーションを調整する工夫が必要です。

このように、字幕と吹き替えでは、翻訳も異なってきます。

アニメ翻訳の言葉遣い:日本語ならではの難しさ

日本語の特徴として、主語がバリエーションに富んでいることが挙げられます。一人称が「私」「あたし」「僕」「俺」など丁寧さや与えるイメージの違い、性差があるだけでなく、自分の名前を呼ぶなど、外国語ではなかなか表現しにくい例があります。英語では一人称が基本的に「I」に統一されるため、他の部分でそのキャラクターらしさを表現しなければなりません。

また、男言葉、女言葉などで表現や語尾などを変化させるのも、日本語独特の表現方法です。そのため、女性があえて男性言葉を使っているケースなどでは、翻訳では別の方法で表現しなければなりません。

一方、いわゆる女性言葉と呼ばれる「~よ」「~だわ」などの表現は、日常会話では以前ほど使われなくなっています。そのため、海外のアニメ作品を日本語に翻訳する際にも、以前より性差を顕著にさせない翻訳が好まれるなど、時代の流れに合わせる必要もあります。

アニメ翻訳の難しさ:地域差・方言

地域差による表現や方言・訛りをどこまで反映するかは、制作側やローカライズ方針を踏まえて決定されます。作品やキャラクターによっては、ある地域の表現を使ったり、吹き替え版であれば、訛りを使ったりという方法もあります。しかし、必ずしもすべての作品で置き換えることができるわけではありません。また、言語によっては、地域差が少なく方言区分が明確でない場合もあります。

一方で、日本のアニメ作品の世界観に合わせた表現を、別の方法で表現してしまうこともあります。例えば、関西弁を話すキャラクターを南部訛りにしたり、ちょっと気取ったキャラクターをイギリス英語で話させてみたり、共通のイメージを基に選択します。もちろん、何の関係もない選択ではなく、それなりに共通点があるからこその選択であるわけですが、しっくりくる表現は、制作側の方針や翻訳者の判断によって選ばれます。

アニメ翻訳で世界観を壊さないために

アニメの翻訳では、作品の世界観をいかに伝えるかが大切です。しかし、翻訳ではできることが限られているのも事実です。字数制限やリップシンクといった制約の中、文化や習慣の違いを乗り越えて、アニメの世界を別の言語で書き換えるのがアニメ翻訳です。

日本のアニメでは、キャラクター性を強調するための口癖が用いられることがあります。しかし直訳が難しいため、別の方法でキャラクター性を表現するケースが多いのです。これは、言語によってはそもそも存在しないため、再現のしようがないためです。そのため、そのままにするという選択肢もありますが、そうすると世界観がうまく伝わらない可能性があります。そこで、他の方法でキャラクターの性格などを表現していく必要があるのです。

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まとめ

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▶著者紹介

株式会社十印 マーケティング部
石川弘美

1990年に株式会社十印に入社し、マニュアル制作に従事。日本語原稿の書き起こしから、多言語マニュアル制作のディレクションまで、幅広い業務を担当。
2002年より、ローカリゼーション・プロジェクトのマネジメントを中心業務とし、同社の数々の大型プロジェクトの進行管理を担当。2009年よりはマーケティング部にて宣伝広報活動とともにマーケティング活動を行う。
一般社団法人日本翻訳連盟理事(2018年~2026年)、アジア太平洋機械翻訳協会理事(2018年~)。

#エンタメ翻訳
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